2013年4月14日に、朝日カルチャーセンターで『ミュージカルへ
の招待』という講座がありました。
講師は、岡幸二郎さん。
講座は、前日に満席となっていました。
ここのカルチャースクールでは、他にもミュージカル俳優と歌を歌おう講座とか、ミュージカルソング講座、解説とチケット付き歌舞伎観劇講座などもありま
す。
今回のテーマは、『レ・ミゼラブル』。(今回のということは、今後もこの講座があるのかな?)
「では、岡さんに登場して頂きましょう!」と、予想もしていなかった扉を開けたら・・・いない。
まさかの出オチ??(トイレに行ってたそうですwww)
当たり障りのない部分についてご紹介します。
新演出『レ・ミゼラブル』についても、ちょっとだけお話がありました。
椅子が用意されていたのですが、岡さんは一度も座ることなくお話しされていました。
一番後ろの席の方もよくお顔が見えたことでしょう。
■ アンジョルラスのオーディションを受けた時の様子
オーディションを受けるまで『レ・ミゼラブル』の舞台を見たことはなかった。
オーディションで歌った曲は『レッド・アンド・ブラック』。
何度か「こんな風に歌ってみて。」「トランペットのように歌ってみて」と言われて、
ジョン・ケアードから質問されたことはただひとつ。
「ストレートプレイはやったことある?」
「ありません」
「ありがとう」
■ アンジョルラスを作り上げるにあたって
岡さんがアンジョルラスに採用されたときには、前回公演から引き続きアンジョルラス役だった人がいなかったため、試行錯
誤して役を作った。
カフェのシーンでは、アンジョルラス・マリウス・クールフェラックの3人だけで稽古した。
この三人がこのシーンの軸になっている。
石井一孝さんとは、いっしょに役を作り上げたことから、信頼感がある。
■ ジャベールを作り上げるにあたって
ジャベールを稽古している間、ジョン・ケアードからは何もダメだしされたことがなかった。
ジョン・ケアー度が帰国する日、ジョンに何か自分へ言うことはないかと聞いたら、「大丈夫だ。」の一言だった。
何が大丈夫なのかもわからないまま、その言葉を信じて演じることになった。
一度ジョンに「君は黒ひょうの
ジャベールだ」と言われて、
化粧前を全面ひょう柄にしてしまった。
同じ役は同じ楽屋で、他の人はみんな普通なのに、一角だけひょう柄。
ある時、岡さんが不在のときに、高島さんのもとに三輪明宏さんが訪ねていらして、
「これあなたの化粧前?」
「いえ、ちがいます。」
「あら、そう、私と同じテイストね」
と言っていたと、高島さんから聞いた。
舞台裏には、男性の着替えていて、衣装がずらりと並んでいる。
そこを通るときには、「いえーい」とタッチしたりしながら移動しているが、
ジャベールが自殺に向かうシーンの時だけについては、役に入る混むため、だれとも口を利かず、下を向いて通り過ぎる。
■ 各ジャン・バルジャンを演じる俳優さんの役作りの違い
事前にきっちりジャン・バルジャンの役を作り上げてきて、稽古場に入った時からジャン・バルジャンになりきっているのが滝田栄さん。
直前まで、みんなで「わー」とはしゃいでいて、舞台に一歩踏み入れた瞬間にバッチンと役のスイッチが入るのが鹿賀丈史さん。
そのため、相手の俳優さんに合わせて、演技を変えることもある。
実はよく計算された演技をするのが山口祐一郎さん。ああ見てて。
対決のシーン、ジャン・バルジャンとジャベールが向かい合って歌うシーンだが、
楽譜どおり強く歌う役が、自然に客席を向いて、よく聞こえるように動いている。
細かな演技を考えて演じるのが別所哲也さん。
岡さん自身は、舞台に立った瞬間にスイッチが入る鹿賀さんタイプ。
■ 衣装について
今日は、東宝から借りてスペシャル版のアンジョルラスの赤いベストを持ってきました
この衣装だけが、本物の金糸が使われている。
他のひとよりボタンとモールを多くしたため、一見赤ではなく金に見えてしまう。
アンジョルラスの赤いスカーフも一人ひとりに合わせて色が違う。
俳優さんが「こういう素材で、こういう色で」と指定することもある。
スペシャル版では、衣装さんから「岡さん、すきなスカーフかってきてね」と言われたので、
シルクの赤いスカーフを買ってきて、さらに衣装さんに染め直してもらっている。
また、はや替えのため、通常マジックテープは使わないが、衣装はや替えのために、つくりリボンで首の後ろでマジックテープで留めるようになっているが、
自分は、つくりリボンが嫌でふわっとした状態にしたかっために、毎回結わいている。
海外ではアンジョルラスは黒いスカーフをしているのに、なぜ日本だけ赤いスカーフなのでしょうか?
日本初演の内田直哉さんが、学生のなかで目立たせるため。
その後も日本では、赤いリボンを使っていたが、坂元健児は黒いリボンの方が似合った。
ジョン・ケアードからも舞台をみて、黒にチェンジと指示があって変更された。
それからは、その人に似あう色で赤か黒かは決められる。
ジャベールのコートもみんな異なっていて、自分が着ていたものがカシミアでいちばん重くて、
熱い。
このコートは、高島さんと共有で、腕の長さが違うから、袖口の部分で長さが調整できるようになっている。
袖口のボタンも可動になっている。
ファンテーヌの青いワンピースは、ローラ・アシュレー。
よくみると花の柄です。
毎回スタッフが海外へ生地を買い付けにいっています。
ファンティーヌは、同じ生地でドレスを作ってコゼットに贈っているのですが、
テナルディエ夫妻は、そのドレスをコゼットではなくかわいい自分たち娘(エポニーヌ)に着せてしまっている。
■ 怪我による降板について
アンジョルラス役の時に、玉突き事故に巻き込まれてしまって、むち打ち症
になってしまった。
1幕の囚人役などは、ギブスの上に、ボロを巻いてでたけれど、2幕は東宝側から危険なバリケードがあるから交代した方がよいといわれて、
すでにWキャストがスタンバイしている状態だった。
その時は、2幕幕あいたら突然違う人がアンジョルラスだったので、客席がざわついたそう。
申し訳なくなって、ポスターの後ろに、筆で急遽降板した理由とお詫びの言葉を書いて、ロビーに張り出してもらった。
これまでも、何度か過呼吸になったことがあって、過呼吸になるときには、前兆で分かる。
ある時、ジャベールが自
殺する直前に過呼吸になってしまって、フラフラしてしまった。
フラフラしてるシーンなのでいいのだけれど。
どのように歌って、どのように演技したのかはもうわからない。
そのあと救急車で運ばれた。救急車がなかなか来なくて、運ばれたときには終演後だった。
東宝は、出演を継続するか、降板するか、自分に決断するように言われた。
継続して出演することを選んで、毎日注射と横隔膜をマッサージしてもらって、出演し続けた。
レ・ミゼラブルには、複数の役者がキャスティングされている。
いつでも交代させられる厳しい世界だが、いつでもベストの状態で上演できるようになっている。
アンジョルラスを演じているときは、一度も過呼吸になることはなかった。
自然に演じられる役だと思う。
■ 小道具について
アンジョルラスが民衆に配っているチラシは、初演の時はただの白い紙だった。
しかし、アンジョルラス役の森田浩貴さんが、フランス語が得意だったために、チラシに書くことにした。
内容もちゃんとしたもので、『子供たちには教育を。男には仕事を。バリケードを築こう。 どこに、○○に。いつ、○○に。』と書かれている。
以降の公演では、森田さんの書いたものをコピーして使っている。
■ (出席者からの質問)アンジョルラスが死んでいるとき何を考えているのですか?
いかに美しく見えるかwww
ベスト下にサスペンダーをしているので、それが見えないように、身だしなみをものすごく身だしなみを整えている。
通常アンジョルラスは、バリケードの梁に足の甲を掛けて逆さになっているが、
私は、かかとの部分を掛けて、できるだけ足までまっすぐに見えるようにしている。
そのため、もし揺れたら、頭から落ちてしまう。
過去には、口から血を流して死んだ人もいる。
自分は、あの赤い旗が、すべての人々の血を象徴していると思うので、血は必要ないと考えている。
■ (出席者からの質問)岡さんが考えるベストメンバーは?
お答えできません。
演出家が、その役を演じられると判断した俳優がキャスティングされています。
この俳優がよい。よくない。というのはあくまで個人の好みです。
偶然、観たときの俳優のコンディションもあるでしょうし、見ている方自身のコンディションもあるので、一概によい悪いとは言えないでしょう。
それぞれの俳優はそれぞれの役作りをしているので、あなたにあうキャストの公演を選んでください。
そのためにキャストを発表しているのですから。
きっと、キャスト表で見たいキャストをピンクやオレンジの蛍光ペンで色を塗って、
一番塗りつぶされた日をS席。ここはA席でいいかなってやってるんでしょう? (はい。その通りでございます。)
■ (出席者からの質問)演じやすい共演者は?
こちらも、お答えできません。
というより、この人がいい、この人が嫌ということはない。
枕元にキャスト表を置いておいて、寝る前に明日の共演者をチェックしている。
「明日はだれだれさんかぁ。じゃあ、こういう演技で来るだろうから、こういう風に演じて・・・」と考えてしまって、朝になってしまう。
『レ・ミゼラブル』出演中はあまり眠れない。
石井一孝は、一緒に役を作り上げてきたこともあり。
お互い言わなくても言いたいことが分かるという点で、演じやすい。
■ (出席者からの質問)なんでジャベールは自殺してしまうの?
単純に考えれば、バルジャンによって、自分の価値観が崩れてしまったということなのでしょうが・・・
ジャベール演じる際、なんのためだったら死ねるだろうかと考えた。
愛する人のためだったら、死ねるかなーと思った。
ジャベールがバルジャンに対する愛があったとしたら。
「愛」って「LOVE」じゃないですよ!!
もし、今後自分がバルジャンの人生の障害になるとしれば、死ねるのかなーと考えた。
あくまで、自分の中でですけど、そしたら一度泣けて泣けて。石井一孝バルの時でした。
■ レ・ミゼラブルの魅力
それは愛。
ファンテーヌのコゼットへの愛。
コゼットとマリウスへの愛。
そして、何度見ても見ても、どれかの登場人物に感情移入して見られる。
最初はコゼット、エポニーヌ、母親になったらファンテーヌでしょう。
そして、マダム・テナルディエ、最後はテナルディエで性別まで変わってしまう。