※ この記事はネタバレを含みます。
『マイ・フェア・レディ』の原作は、バーナード・ショーが書いた戯曲『ピグマリオン』です。
『ピグマリオン』は、日本でもしばしば上演されています。
『ピグマリオン』では、イライザが最後に選ぶのは、ヒギンス教授ではなくフレディだということをご存じの方も多いでしょう。
『ピグマリオン』と『マイ・フェア・レディ』で大きく異なるシーンは、
アスコット競馬のシーンとヒギンス邸を飛び出した後のシーンぐらいで他はほとんど同じなのです。
細かい違いについてご紹介します。
よろしければ、
ピグマリオンのページもご参照ください。
ヒギンス教授像 『マイ・フェア・レディ』では、最初イライザが騒々しい人物で、
徐々にヒギンスの子供っぽい一面が明らかになり、最後にはイライザとヒギンスは完全に逆転してしまっていますね。
『ピグマリオン』では、最初からわがままで子供っぽい部分が描かれています。
練習シーンが少ない
『ピグマリオン』では、イライザのへんてこな発音練習のシーンがありません。
また、「スペインの雨は主に広野に降る」に相当する「話せるようになる瞬間」のシーンもありません。
「CUP」の発音ができた次のシーンでは、社交界デビューのシーンになっています。
フレディは貧乏貴族
『マイ・フェア・レディ』でも、ヒギンスはフレディと結婚するとお金に困るだろうとおもていますが、
『ピグマリオン』では、このあたりが分かりやすくなっており、フレディは貧乏貴族であることが分かります。
フレディの妹クララはお金がないために、あまりパーティーにも出ることができないとなっています。
考えてみれば、オープニングでオペラが跳ねた後、フレディがタクシーを探していることから、
自家用車(または自家用馬車)で来られないことが伺え、ここからフレディの家はそんなに裕福でないことが推し測ることができます。
このシーンは、『ピグマリオン』にもあります。
イライザの社交界デビューは競馬場ではない
『マイ・フェア・レディ』の華やかなシーンの一つは、イライザが初めて社交の場にデビューするアスコット競馬のシーンですよね。
『ピグマリオン』では、ヒギンス教授の母親のサロンということになっています。
ミセス・ピアス
ヒギンス教授の家政婦で、『マイ・フェア・レディ』にも『ピグマリオン』にも登場します。
『ピグマリオン』ではその役割が大きく、たびたびミセス・ピアスからヒギンス教授の言動について忠告しています。
美しくなったイライザを父親は日本人と間違える
ヒギンス教授の家に引き取られ、それまでイライザが着ていた洋服は捨てられてしまいます。ここは両作品も同じですが、
『ピグマリオン』では、着るものがないのでとりあえずヒギンス教授がお土産で持ち帰った着物を来ています。
そこにやってきたドゥーリトル氏は、イライザを日本人だと見間違えてしまいます。
というこことは、ヒギンス教授は日本に来たことがあるんですね。
フレディとのキスシーン
ヒギンス邸から飛び出したイライザ、フレディからの交際の申し込みに『マイ・フェア・レディ』ではイライザははぐらかして終わってしまいますが、
『ピグマリオン』ではキスを受けます。
ヒギンスかフレディか
『マイ・フェア・レディ』では、ヒギンス教授邸にイライザが戻ってくるシーンで終わっています。
その後、二人は結婚したのか、イライザが秘書のよう立場のままであったかは想像するかは想像するしかありませんが、
多くの人は前者を取ったことでしょう。
『ピグマリオン』でも、ヒギンスの言う通りにはならないわと言い捨ててて、父親の結婚式に向かうシーンで終わっています。
そこから、フレディを選んだのだろうと観客の想像に任されています。
バーナードショーが書いた後日談
本編ではなく、バーナードショーがイライザのその後を書き残しています。
それによると、フレディと結婚したイライザは二人で花屋を開きます。
しかし、ヒギンス教授の縁が切れたわけではなく、イライザはヒギンス教授の家を取り仕切り続けるとなっています。
ヒギンス教授のモデルは、名探偵シャーロック・ホームズだそうです。
うーーん、そう言われてみればそうかもって感じでしょうか?
共通点を挙げてみました。
天才であるが変人
二人とも天才ではありますが、知識の偏りがある変人です。
シャーロックは、ワトスン博士以外に友人がいそうにもないし、ヒギンス教授にもピッカリング教授以外にいそうもないです。
二人とも社交界が嫌いで、顔を出すことはありません。
上流社会
ヒギンス教授は、貴族のボンボンのようですが、
シャーロック・ホームズは、貴族ではないものの、かなりお金を持っていたようで汽車はいつも一等車。
(厳密には、シャーロック・ホームズは、中流階級です。)
ホームズの兄は、イギリス中枢に強い影響力をもっていたとされる人物です。
独身主義者
ホームズは生涯独身でした。1話だけ女性にまつわるエピソードがあるのですが、それはホームズがまんま騙された女優で、
単に頭の切れる彼女に感服したのか、恋心を抱いたのかは、ちょっと計りきれない部分があります。
ヒギンス教授も独身主義者で、何故世の男は結婚したがるか分からないと言ってましたね。
スリッパ
ヒギンス教授は、なぜかスリッパに執着していたようで、最後にはイライザに投げつけられていましたが、
ホームズはホームズで、スリッパの先に葉巻を詰め込んでおいたそうで、妙なこだわりを見せています。
ヒギンス教授とホームズの大きな違い
一番の違いは暮らしぶり。ヒギンス教授は沢山の執事、家政婦、メイドたちに囲まれて暮らしていますが、
ホームズは下宿ぐらしです。下宿屋のおばさんハドソン夫人にご飯を作ってもらい、身の回りの世話はページボーイ程度しか出てきません。
これは、イライザの住む世界と、ヒギンス教授の上流社会との違いを大げさにするためだったと思われます。
ヒギンス教授には母親がいてどう見てもマザコンですね。
ホームズには、母親はいないようで、まったく母親については触れれていません。
ピッカリング大佐はワトスン博士?
ピッカリング大佐がワトスン博士のモデルだという情報はないのですが、ホームズの相棒と言えば彼でしょう。
ピッカリング大佐は、インドから帰国した退役軍人のようですが、ワトスンも陸軍所属の軍医で、アフガニスタンから帰国した際ホームズと出会っています。
ホームズと比べると非常に温和で、一般常識があり、女性に対しても紳士的です。
『マイ・フェア・レディ』と『シャーロック・ホームズ』の奇妙な巡り合わせ
『マイ・フェア・レディ』でフレディを演じているのは、ジェレミー・ブレット。
ジェレミーは、後にNHKでも放送されたドラマ『シャーロック・ホームズ』でホームズを演じました。
挿絵そのままの姿のジェレミーは、史上最高のホームズ俳優といわれています。