エリックは、音楽・建築学において天才だった。
しかし、その顔の醜さから母親からも疎まれ、仮面を被って育った。
母は一度もキスをくれたことはなかった。
エリックの奇術は世界に知れ渡り、ペルシャのシャーがナーディルに命じてエリックを連れて来させた。
シャーは、エリックに奇術を凝らした宮殿を造らせた。
ナーディルの一人息子は、不治の病だった。
エリックは、ナーディルの息子に安らかな死を与えた。
その恩からナーディルは、シャーから殺害命令が下されていたエリックをペルシャから逃がしたのだった。
故国のフランスにもどったエリックは、パリでオペラ座が建築されることを知った。
エリックは、音楽の殿堂の建築に加わった。
オペラ座が完成すると、エリックはオペラ座の地下で人知れず残りの人生を贈ることにした。
ある時、エリックは、端役の歌手クリスティーヌに魅入られてしまった。
≪以下クライマックスからデンディングまで≫
エリックは姿を現さず、「自分は音楽の天使」だとしてクリスティーヌに歌のレッスンをした。
オペラの主役は、次々にトラブルに見舞われ、クリスティーヌに大役が回ってきた。
クリスティーヌは公演で大成功をおさめ、ラウル・ド・シャニュイ子爵とたちまち恋に落ちた。
嫉妬したエリックは、クリスティーヌをオペラ座の地底に連れ去ったが、クリスティーヌはその顔を見てしまった。
エリックは、クリスティーヌに自分かラウルの死かどちらかを選ぶように迫った。
クリスティーヌは、エリックにそっとキスをした。
ひそかに結婚式を挙げたが、その日のうちにエリックの寿命が尽きた。
ラウルは、クリスティーヌと結婚して以来、パリに来たことはなかった。
数年前クリスティーヌも亡くなった。
今、息子のシャルルとパリにやってきた。
オペラ座に、いや過去に決別するために。
シャルルは、音楽の天才だった。そして・・・美しかった。